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修繕ギャップ

▶ 定義

修繕ギャップとは、点検で「要修繕」と判定されたにもかかわらず、予算・人手・段取りなどの制約によって修繕に着手できない、あるいは大幅に先送りされる状態を指す呼称である。

行政用語ではありません。2026年6月にセイスイ工業株式会社が公表した自治体下水道の実態調査で用いられた呼称です。「見つける」仕組みと「直す」体制のずれを一語で言い表せるため、本サイトでは維持管理の構造的な課題を指す言葉として扱っています。

01 7割超が「着手できなかった」と答えている

セイスイ工業株式会社が全国の自治体で下水道事業に携わる職員108名を対象に実施した調査(2026年6月4日から6月5日、インターネット調査)では、次の結果が出ています。

  • 点検の結果「要修繕」と判定されたにもかかわらず、修繕に着手できなかった、または大幅に先送りした経験が「頻繁にある」21.3%、「時々ある」50.0%(合計71.3%)
  • 点検義務化に向けた課題は「予防保全のための予算確保が難しい」52.8%「点検や工事を監督する自治体職員(人手)が不足している」50.9%「陥没リスクの診断や、修繕の優先順位付けが難しい」48.1%
  • 点検・予防修繕の年間予算を必要額の7割未満しか確保できていない自治体が半数以上(53.7%)
  • 意思決定で最も時間を要する工程は「仮設水処理(バイパス等)の工法・業者の検討」43.5%、次いで「予算化・議会への説明資料の作成」39.8%、「修繕工法(開削・更生工法等)の選定」38.0%

注目すべきは、同じ調査で点検・予防修繕を「計画通り」「概ね計画通り」に進められていると答えた職員が69.4%いることです。点検は回っている。しかし「要修繕」と判定した後で止まる。ボトルネックは点検ではなく、点検と修繕の間にあるということを、この2つの数字の並びが示しています。

02 「見つける量」が増えれば、ギャップは広がる

国は点検を強化してきました。平成27年には下水道法に基づく維持修繕基準を創設し、腐食のおそれの大きい下水道管路について5年に1回以上の点検を義務づけています。さらに令和7年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、全国特別重点調査が行われました。

その結果が令和8年4月21日に公表されています。対象535団体・5,332kmのうち、令和8年2月末時点で5,121kmの目視調査を実施し、対策が必要な延長は748km。内訳は緊急度1(原則1年以内の速やかな対策が必要)が201km緊急度2(応急措置を実施した上で5年以内の対策が必要)が547kmでした。

点検の網を広げれば、要対策箇所は必ず増えます。「見つける」能力の向上に「直す」体制が追いつかなければ、その差分がそのまま修繕ギャップになるという構造です。無人点検技術(No Entry点検)の普及は点検能力をさらに引き上げるため、この問題は今後さらに顕在化します。

03 下水道に限らない ── 工場・ビル設備でも同じ構図

上記の調査対象は自治体の下水道事業ですが、構図は民間の設備保全でもそのまま当てはまります。点検表に「要修理」と書いたまま、次の点検日を迎えてしまう。理由は予算計上のタイミング、部品の調達期間、生産を止められない事情、そして担当者の記憶の外に出てしまうこと。

調査で「意思決定に最も時間がかかる工程」の1位が下水を止めずに修繕するための仮設水処理の検討だったことは示唆的です。工場でいえば「設備を止めずにどう直すか」の段取りにあたります。修繕ギャップの多くは、技術ではなく段取りと合意形成で発生しているということです。

保全担当者が明日からできること
  • 「要修繕」の滞留リストを作る:判定日・部位・緊急度・未着手の理由を1行で並べる。件数と滞留日数が見えるだけで、予算要求の材料になります。
  • 未着手の理由を分類する:予算/人手/部品/停止できない/優先順位が決まらない。理由ごとに打ち手が違うため、混ぜたままでは解けません。
  • 止めずに直す方法を先に調べておく:着手が遅れる最大の要因は、この段取りの検討に時間がかかることです。緊急時に相談できる工法・業者を平時に把握しておく価値は大きい。
  • 先送りの記録を残す:いつ、なぜ見送ったかを記録に残しておくと、事故が起きた際の説明責任にも、翌年度の予算折衝にも使えます。

よくある質問

Q. 「修繕ギャップ」は公的に定義された言葉ですか。

A. いいえ。法令にも行政の基準類にも定義はありません。2026年6月にセイスイ工業株式会社が公表した実態調査で用いられた呼称です。ただし、それが指している現象(点検で見つけた要対策箇所に着手できない)は、国土交通省の全国特別重点調査の数字からも裏づけられます。言葉は民間由来、現象は公的データで確認できるという関係です。

Q. 点検を減らせばギャップは小さくなりますか。

A. 見かけ上は小さくなりますが、リスクは残ったままです。下水道では腐食のおそれの大きい管路について5年に1回以上の点検が法令上の義務であり、そもそも減らせません。ギャップは点検を減らすのではなく、修繕の実行力を上げることでしか埋まらない問題です。

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なお、要修繕箇所の滞留を可視化するには、点検結果と対応履歴が設備ごとに1か所へ集まっている必要があります。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。

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