▶ 定義
フロン排出抑制法の簡易点検とは、業務用エアコン・冷凍冷蔵機器(第一種特定製品)の管理者に義務づけられた、3か月に1回以上の日常的な点検である。これに加えて、圧縮機の定格出力が7.5kW以上の機器には、専門的な冷媒漏えい検査である定期点検が義務づけられている。
根拠は「第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項」(平成26年経済産業省・環境省告示第13号)。対象は所有者である管理者であり、設備業者に委託していても原則として義務の主体は変わりません。
01 2種類の点検 ── 誰が、何を、どのくらいの頻度で
混同されやすいのですが、義務は「すべての機器にかかる簡易点検」と「一定規模以上の機器に上乗せされる定期点検」の2階建てです。
| 区分 | 対象 | 頻度 | 実施者 |
|---|---|---|---|
| 簡易点検 | すべての第一種特定製品 | 3か月に1回以上 | 具体的な制限なし |
| 定期点検 | 圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上の機器 | 機器の種類と出力による(下表) | 十分な知見を有する者が自ら行うか、立ち会う |
定期点検の対象機器と点検頻度
| 機器 | 圧縮機の定格出力 | 頻度 |
|---|---|---|
| エアコンディショナー | 7.5kW以上50kW未満 | 3年に1回以上 |
| エアコンディショナー | 50kW以上 | 1年に1回以上 |
| 冷蔵機器および冷凍機器 | 7.5kW以上 | 1年に1回以上 |
※ 環境省「第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き(第3版)」表15より。3年に1回でよいのは50kW未満のエアコンだけで、それ以外は1年に1回以上です。
簡易点検で見るのは、冷蔵機器・冷凍機器の庫内温度や、製品からの異音、製品外観(配管を含む)の損傷・腐食・錆び・油にじみ、熱交換器の霜付きなど、冷媒漏えいの徴候です。定期点検では直接法や間接法による専門的な冷媒漏えい検査を行います。
02 見落とされやすいのは「記録」の義務
点検の頻度は知られていても、記録の要件が抜けている現場は少なくありません。環境省は次のように定めています。
- 管理者は、機器の点検や修理、冷媒の充填・回収等の履歴を記録・保存する必要がある
- 様式は自由(記録事項を満たせばよい)。機器ごとに点検記録簿として作成・保存し、紙でも電子媒体でもよい
- 保存期間は、当該製品の廃棄等を行い、冷媒の引渡しを完了した日から3年を経過するまで
- 設備事業者等が点検等を行う際、管理者は求めに応じて記録を開示する必要がある(修理せず繰り返し充填していないかを判断するため)
保存期間の起点が「点検日」ではなく「機器を廃棄して冷媒を引き渡した日」である点に注意してください。機器を使い続けている限り、その機器の記録は捨てられません。10年使う機器なら、10年分+3年が保存対象になります。
また、漏えいが確認された場合は、可能な限り速やかに漏えい箇所を特定し、修理を行うまでは原則として冷媒の充填が禁止されています。「とりあえずガスを入れて様子を見る」という対応は認められていません。
- 台帳で7.5kWの線引きをする:定期点検の対象かどうかは室外機の銘板で確認します。「呼称出力」「電動機出力・圧縮機」と記載されていることもあります。台帳に定格出力の欄がなければ、まずそこを追加する。
- 簡易点検の3か月サイクルを機器ごとに回す:全機器が対象です。設置場所が分散しているほど抜けやすいので、機器一覧に次回予定日を持たせる。
- 点検記録簿を機器単位で持つ:様式は自由ですが、機器ごとに追える形であることが要件です。年度別ファイルに綴じる運用だと、廃棄時にその機器の履歴を集めるのが困難になります。
- 常時監視システムの活用を検討する:令和4年8月の告示改正で、一定の要件を満たす常時監視システムを利用することで簡易点検を代替できるようになりました。多拠点・多台数を管理している場合は選択肢になります。
よくある質問
Q. 点検を設備業者に委託していれば、管理者の義務は果たされますか。
A. 簡易点検の管理業務を委託することは可能です。ただし環境省のFAQは「その場合であっても原則として、第一種特定製品の所有者が管理者にあたります」としています。委託していても、義務の主体は所有者です。
Q. 高圧ガス保安法や労働安全衛生法の点検を実施していれば、簡易点検は不要ですか。
A. 環境省のFAQは「それらの点検が、判断基準に規定する内容を満たしているのであれば、その点検をもって簡易点検とみなすことができます」としています。別に実施する必要はありませんが、判断基準の内容を満たしているかの確認と、記録として残しておくことが前提になります。
フロン法の点検は「機器ごとに、廃棄まで追える記録」を求めます。機器台帳と点検履歴が別々に管理されていると、この要件を満たすのが難しくなります。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。