2026年10月9日更新:法律の公布と一部施行、10月5日に公表された技術基準等の検討とりまとめを反映して、全面的に書き改めました。
▶ 定義
改正下水道法(2026年改正)とは、令和8年7月23日に公布された「下水道法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第65号)による、下水道法および道路法等の改正をいう。
所管は国土交通省 水管理・国土保全局上下水道企画課および道路局路政課。令和7年1月に埼玉県八潮市で発生した、老朽化した下水道管の破損に起因する大規模な道路陥没事故を直接の契機としています。柱は「安全性確保を最優先する下水道マネジメントの確立」「道路地下空間の安全性確保」「下水道マネジメントを支える基盤の強化」の3つです。災害時に都道府県が復旧工事を代行する制度は2026年8月17日に先行して施行され、それ以外の大部分は公布の日から6か月を超えない範囲内で政令で定める日に施行されます。
01 なぜ改正されたのか
法案の概要は、背景と必要性を次のように記しています。
令和7年1月に埼玉県八潮市で老朽化した下水道管の破損に起因する大規模な道路陥没事故が発生。施設の老朽化、職員数の減少等を受け、下水道の事業環境は厳しさを増している状況。下水道管路をはじめとする道路下の埋設物について適切な維持管理が必要。
押さえておきたいのは、この改正が下水道法だけの話ではないことです。陥没は「下水道管の損傷」と「その上にある道路」の両方にまたがる事象であり、改正は下水道法と道路法をセットで動かしています。従来、下水道管理者と道路管理者の間で情報が分断されていた部分に手を入れた、というのが構造上の要点です。
02 3つの柱と、その中身
| 柱 | 主な内容(法案の概要より) |
|---|---|
| 1. 安全性確保を最優先する下水道マネジメントの確立 【下水道法】 |
老朽化に伴う管路の安全性(状態と対策の要否)を評価する診断の基準を法制化(併せて、政令等で定める点検の頻度・方法の基準を見直し)/下水道管理者は診断結果等の維持管理の状況を公表/計画的な改築の実施と収支見通しの公表/改築資金を含む下水道使用料の算定の考え方を明確化/構造について、点検・修繕・改築や災害・事故時の応急措置の容易性(複線化等)を考慮すべきことを原則化/人口減少を踏まえた下水道区域の見直し |
| 2. 道路地下空間の安全性確保 【道路法】 |
道路占用者と道路管理者との間で「占用物件等維持修繕協定」を締結し、道路や占用物件の点検や修繕等を連携して行うことができる制度を創設/占用許可申請書の記載事項に占用物件の維持管理に関する事項を追加/道路の地下に埋設する占用物件の工事完了時の届出(竣工図等の提出)を義務付け |
| 3. 下水道マネジメントを支える基盤の強化 【下水道法】 |
法律の目的に「下水道の基盤の強化」を明示するとともに、国の基本方針を創設/都道府県が広域連携推進計画を策定する制度を創設/公共下水道を都道府県が管理できる特例、管理者間の協議により点検・修繕・改築を他の自治体が代行できる制度/災害・事故時における都道府県による復旧工事の代行制度と、関係者連携の責務の明確化/下水道の点検に関して道路管理者の協力が必要な事項を事業計画に位置づけ |
実務者の視点では、1つ目の柱の「診断の基準の法制化」と「維持管理状況の公表」が最も重い変更です。これまで点検の結果をどう評価するかは自治体ごとの運用に委ねられる部分がありましたが、基準が法制化されれば判断の物差しが揃い、公表義務がかかることで結果が外から見えるようになります。
03 いつから施行されるのか
法律は令和8年7月23日に公布されました。施行は2段階に分かれています。国土交通省の8月4日の発表によれば、災害時に都道府県が公共下水道の復旧工事を代行する制度は「公布の日から3月以内の政令で定める日」に施行することとされており、その日を令和8年8月17日とする政令が8月7日に公布されました。それ以外の規定は、法律の附則により「公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日」に施行されます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 令和8年3月27日 | 法律案を閣議決定 |
| 令和8年7月23日 | 公布(令和8年法律第65号) |
| 令和8年8月17日 | 一部施行:災害時の都道府県による公共下水道の復旧工事の代行制度(施行期日政令は8月4日閣議決定・8月7日公布) |
| 令和8年10月5日 | 国土交通省が「下水道管路マネジメントのための技術基準等に関する検討とりまとめ」を公表(後述) |
| 年内(予定) | 政省令・告示の公布 |
| 令和9年1月中(予定) | 政省令・告示の施行。法律本体の施行期限は、公布から6か月の令和9年1月23日まで |
※ 「年内」「令和9年1月中」は、技術基準等検討会 第8回(令和8年9月25日)の資料「今後のスケジュール」に示された予定です。施行日は政令で定められるため、確定したらこのページを更新します。
04 点検の頻度と公表はどう変わるのか ── 技術基準等の検討とりまとめ
法律は「診断の基準の法制化」と「点検の頻度・方法の基準の見直し」を定めましたが、具体的な数字は政省令・告示で決まります。その中身を国土交通省の検討会が整理したのが、2026年10月5日に公表された「下水道管路マネジメントのための技術基準等に関する検討とりまとめ」です。考え方の柱は、事故時の社会的影響を踏まえて管路を「重要管路」と「重要管路以外の管路」に分け、「メリハリ」をつけて点検することです。
| 区分 | 点検の頻度(検討とりまとめ) |
|---|---|
| 重要管路 事故時の社会的影響の大きい管路 |
テレビカメラ等による全数点検。要注意箇所は3年または5年に1回以上(化学・力学・地盤的な弱点が重なる箇所や硫化水素ガス濃度が特に高い箇所は3年に1回以上)、それ以外は10年に1回以上 |
| 重要管路のうち「健全度Ⅲ」が続く箇所 | さらに高頻度化する。目安は、10年に1回以上の箇所は5年に1回以上、5年に1回以上の箇所は2~3年に1回以上、3年に1回以上の箇所は1~2年に1回以上 |
| 重要管路以外の管路 | 要注意箇所(化学的弱点箇所)は5年に1回以上の全数点検。それ以外は、地方公共団体がリスク評価等に基づいて頻度を設定する |
公表についても具体的になりました。重要管路と、重要管路以外の管路の要注意箇所をあわせた「重点点検管路」について、施設配置・診断年月日・診断結果・対策内容を1年に1回以上の頻度で公表(更新)することを必須とし、GISデータベースシステム上での公表を標準と位置づけています。施設の改築費用を含む収支見通しの公表も標準とされました。このほか、必要な知識や技能を有する者が診断すること、重要管路で水位を下げられない箇所での複線化等による多重化、改築の機会をとらえた維持管理の容易性の確保が原則として示されています。
※ ここに示した頻度や公表の内容は、検討とりまとめが示した「国の技術基準等」の内容です。法令として確定するのは政省令・告示が公布されたときです。
- 点検結果を「公表できる形」にしておく:検討とりまとめは、重点点検管路の施設配置・診断年月日・診断結果・対策内容を年1回以上公表することを必須としています。手元のメモや個別ファイルに散っている記録は、そのままでは外に出せません。
- 自分の管路が「重要管路」に当たるかを確かめる:重要管路は要注意箇所以外でも10年に1回以上の全数点検の対象になります。どの管路が該当し、どこが要注意箇所かを先に洗い出しておくと、点検計画と予算の見積もりが立てやすくなります。
- 道路管理者との連絡経路を確認する:占用物件等維持修繕協定や、事業計画への協力事項の記載は、相手方の合意を前提にしています。誰と話をつけるのかを先に把握しておくと動き出しが早くなります。
- 改築の収支見通しを描き始める:計画的な改築の実施と収支見通しの公表は、単年度の予算折衝とは別の作業です。使用料の算定の考え方も明確化されるため、早めに資料を揃えておくと議論が進みます。
よくある質問
Q. 改正下水道法はいつから施行されますか。
A. 法律は令和8年7月23日に公布されました(令和8年法律第65号)。災害時に都道府県が公共下水道の復旧工事を代行する制度は、令和8年8月17日に先行して施行されています。診断基準の法制化や維持管理状況の公表などそれ以外の規定は、公布の日から6か月を超えない範囲内で政令で定める日に施行されます。国土交通省の検討会資料では、政省令・告示を年内に公布し、令和9年1月中に施行する予定とされています。
Q. この改正で、点検の頻度は変わりますか。
A. 変わる見込みです。頻度は法律本体ではなく政省令・告示で定められます。その内容を整理した国土交通省の「技術基準等に関する検討とりまとめ」(令和8年10月5日)は、事故時の社会的影響の大きい「重要管路」について、要注意箇所は3年または5年に1回以上、それ以外も10年に1回以上の全数点検とし、健全度Ⅲが続く箇所はさらに高頻度化するとしています。重要管路以外の管路も、要注意箇所(化学的弱点箇所)は5年に1回以上です。現行制度では、腐食のおそれの大きい管路について5年に1回以上の点検が義務付けられています。
Q. 小規模な自治体でも、すべて自前で対応しなければならないのですか。
A. そこに手当てをしたのが3つ目の柱です。本来は市町村が管理する公共下水道を都道府県が管理できる特例や、管理者間の協議により点検・修繕・改築を他の自治体が代行できる制度が設けられました。加えて、都道府県が広域連携推進計画を策定する制度もできます。このうち、災害時に都道府県が復旧工事を代行する制度は令和8年8月17日に施行済みで、そのほかは今後施行されます。単独で抱えきれない事務を、広域で分担する道筋が制度として用意されたということです。
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