▶ 定義
CBM(状態監視保全)とは、運転中の設備の状態を計測装置などにより観測し、その観測値に基づいて保全を実施する方式である。これに対し、TBM(時間計画保全)とは、予定の時間計画(スケジュール)に基づいて行う予防保全の総称である。
英語表記は Condition Based Preventive Maintenance / Time Based Preventive Maintenance(農林水産省「農業水利施設の機能保全の手引き」の表記)。いずれも JIS Z 8115(ディペンダビリティ用語)の分類における「予防保全」の下位区分であり、対立する思想ではなく、設備や部位ごとに使い分ける選択肢です。
01 何が違うのか
違いは一点、「いつ手を入れるかを何で決めるか」です。TBMは時間で決め、CBMは状態で決めます。
| 観点 | TBM(時間計画保全) | CBM(状態監視保全) |
|---|---|---|
| 判断の基準 | 経過時間・累積稼働時間 | 動作値・劣化傾向の観測結果 |
| 下位区分 | 予定の時間間隔で行う定期保全/予定の累積稼働時間に達した時に行う経時保全 | 常時監視(オンラインモニタリング)/定期点検時の傾向管理 |
| 現場での典型 | 月点検・年点検、定期整備、部品の定期交換 | 振動・温度・電流値の測定と傾向監視、しきい値による判断 |
| 必要になるもの | 保全周期の根拠(メーカー推奨・過去実績) | 定量的または定性的な点検情報と、良否を判定し健全度を診断するための知見 |
| 弱点 | まだ使える部品を交換する過剰保全になりやすい。周期の間に起きる劣化は捉えられない | 観測項目としきい値を決められないと機能しない。判断できる人材・知見が要る |
国土交通省のマニュアルは、時間計画保全を「予定の時間計画(スケジュール)に基づく予防保全の総称で、予定の時間間隔で行う定期保全と、設備や構成機器が予定の累積稼働時間に達した時に行う経時保全に大別される」と定義し、計画的に実施する定期点検(年点検・月点検)や定期整備・更新等は時間計画保全に含まれると明記しています。日常の点検業務の多くは、すでにTBMとして体系の中にあるということです。
02 保全方式の全体像のなかの位置
農林水産省の手引きは、JIS Z 8115 に基づいて保全方式を次のように区分しています。CBMとTBMは、この体系の「予防保全」の枝分かれにあたります。
- 予防保全(PM):設備の使用中における故障を未然に防止し、設備を使用可能状態に維持するために計画的に行う保全
- 時間計画保全(TBM):定期保全/経時保全
- 状態監視保全(CBM)
- 事後保全(BM):設備が機能低下、もしくは機能停止した後に使用可能状態に回復する保全
- 通常事後保全(PBM):管理上、予防保全を行わないと決めた機器等の故障に対する処置
- 緊急保全(EBM)
重要なのは、事後保全も体系の中にある正当な選択肢だという点です。農水省の手引きは「影響度の小さい機器・部品等については、事後保全を適用し、壊れるまで使うことで費用対効果を最大限に得る」と明記しています。すべてを予防保全にすることが正解ではありません。
03 どちらを選ぶか ── 公的マニュアルの判断軸
農林水産省のゲート設備の手引きは、保全方式の選定を「部位の重要度」と「性能低下予測・傾向管理が可能かどうか」の2軸で整理しています。設備単位ではなく部位単位で考えるのが要点です。
| 部位の重要度 | 傾向管理 | 適した保全方式 |
|---|---|---|
| A・B(設備への影響度大) | 可能 | 状態監視保全(CBM)、時間計画保全(TBM) |
| A・B(設備への影響度大) | 不可 | 時間計画保全(TBM) |
| C(設備への影響度小) | 可能 | 通常事後保全(PBM)、状態監視保全(CBM) |
| C(設備への影響度小) | 不可 | 通常事後保全(PBM) |
この表は「傾向管理ができないならCBMは選べない」という当たり前の事実を、公的資料の形で示しています。CBMを導入したいのに進まない現場の多くは、機器選定ではなく観測項目としきい値が決まっていないことで止まっています。
04 CBMはゴールではない ── 国のガイドラインでの位置づけ
製造業向けの公的ガイドラインであるスマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(SMDG/NEDO・経済産業省製造産業局)は、設備保全の変革課題44「設備不具合の予兆を検知し、安定稼働を維持する仕組み」に、5段階の到達レベルを定義しています。
そのうちLv3「データによるプロセスの連携」の記述が「蓄積されたデータに基づき、設備の状態に基づく保全が行われている」、すなわちCBMに相当する段階です。上位には、リスクを予測してアラートを出すLv4、最適な対処内容まで指示されるLv5が置かれています。
CBMは到達点ではなく、5段階の3段目という整理です。逆に言えば、CBMの手前にはLv1「情報の標準化」とLv2「情報・データの蓄積」があり、そこを飛ばしてセンサーを付けても機能しません。
※ SMDGの本文および別紙リファレンスには「CBM」「TBM」という略語は登場せず、「設備の状態に基づく保全」と記述されています。本ページでの対応づけは、両者の定義内容が一致することによるものです。
- 設備単位でなく部位単位で仕分ける:主要設備を1台選び、部位ごとに「影響度大/小」と「傾向管理の可否」を書き出す。それだけで、CBM候補・TBM継続・事後保全でよい部位が分かれます。
- いま実施している点検がTBMであることを自覚する:月点検・年点検はすでに時間計画保全です。ゼロから始める話ではなく、既存の点検に観測値の記録を足す話だと分かると議論が進みます。
- 観測項目としきい値を先に決める:振動・温度・電流値のどれを、どの値で「要対応」とするか。ここが決まらない限り、センサーを付けても判断はできません。
- 判断の根拠を記録に残す:状態監視保全には「良否を判定あるいは健全度を診断するための知見」が必要だと国交省マニュアルは述べています。その知見は、点検記録に判断理由を書き残すことでしか蓄積されません。
よくある質問
Q. CBMにはセンサーによる常時監視が必須ですか。
A. 必須ではありません。国土交通省のマニュアルは「通常、状態監視保全は、センサ等によるオンラインモニタリングのように、常時、状態を監視するような保全方法をイメージさせることが多いが、本マニュアルにおいては、定期点検における劣化傾向の把握(傾向管理)も状態監視保全に含めるものとする」と明記しています。定期点検時に測定値を記録し、その推移を追うことも状態監視保全です。
Q. TBMは古い考え方で、CBMに置き換えるべきものですか。
A. そうではありません。農林水産省のゲート設備の手引きは「通常、保全方式は、時間計画保全(TBM)が基本であるが、機器・部品等の不具合の兆候を早い段階で検知・監視しながら、その傾向管理を行う状態監視保全(CBM)と組み合わせ、また、設備の重要度によっても予防保全と事後保全を使い分けることが合理的である」としています。置き換えではなく組み合わせが公的マニュアルの立場です。
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CBMがLv3に位置づけられる5段階の全体像と、変革課題44に紐づくNEDOの研究開発事例3件を解説しています。
CBMの成否は、観測値と判断理由が設備ごとに蓄積されているかで決まります。点検記録が紙やExcelに分散していると、傾向管理そのものが成立しません。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。