▶ 定義
下水道管路の健全度とは、点検で確認した異状を、施設の健全性(構造物の安全性)に応じてⅠ(健全)~Ⅳ(緊急措置段階)に区分した診断の区分である。
国土交通省の「下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会」が、2026年10月5日に公表した検討とりまとめで、これまでの「緊急度」に替えて位置づけた区分です。旧来の緊急度とは番号の向きが逆で、緊急度は「Ⅰ」が最も重く、健全度は「Ⅳ」が最も重くなります。2026年10月時点では、法令の用語として確定したものではありません。
01 4つの区分と「診断保留」
とりまとめが示す区分と、それぞれの状態、最低限実施すべき対応は次のとおりです。
| 健全度 | 状態 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| Ⅳ 緊急措置段階 | 構造物の安全性が低下する、又は低下する可能性が著しく高く、緊急に改築等の措置を講ずべき状態 | 緊急に改築を実施し、健全度Ⅰにすることを基本とする。緊急の改築が難しい場合は、改築までの間、道路陥没等を防ぐための地盤改良などを行う |
| Ⅲ 早期措置段階 | 構造物の安全性が低下する可能性があり、早期に改築等の措置を講ずべき状態 | 異状の進行を抑える応急措置をしたうえで、詳細点検の頻度を増やし、改築を行うべきタイミングを適切に判断する |
| Ⅱ 要監視段階 | 構造物の安全性が低下していないが、異状の進行等を監視する必要があり、措置を講ずることが望ましい状態 | 応急措置をしたうえで、計画的に詳細点検を実施する |
| Ⅰ 健全 | 構造物の安全性が低下していない状態 | 引き続き計画的に点検する |
| 診断保留 | 十分な点検ができない等、明確な診断が難しい状態 | 明確な診断ができるよう点検方法の高度化を含めて様々な方法を試す。それまでの間は、巡視や路面下空洞調査、地盤改良、水量の少ない夜間の修繕などで当面の安全を確保する。新しい技術を使っても判断できない場合は、改築や複線化などを行う |
「診断保留」は今回新しく設けられた区分です。これまでは、明確な診断のための点検が難しい状態の扱いがはっきりしていませんでした。とりまとめは、こうした状態を区分として位置づけ、そのときの状態と対応を記録して、のちの監視に活かすよう求めています。
02 これまでの「緊急度」との違い
- 何を表すか:緊急度は対応の基準(急ぎ具合)、健全度は施設の健全性(状態)
- 判定の単位:緊急度はマンホールとマンホールの間(スパン)ごと、健全度は異状のある箇所ごと。異状は局所的に起きることが多いため
- 番号の向き:緊急度は「Ⅰ 重度」が最も重く、健全度は「Ⅳ 緊急措置段階」が最も重い
- 読み替え:とりまとめは、緊急度を健全度へそのまま読み替えることは「不可」としています。旧基準の結果を使って統計的に劣化を予測する場合などに限り、異状箇所ごとのランク評価を、ランクA・a→健全度Ⅳ、B・b→Ⅲ、C・c→Ⅱと読み替えられます。旧基準の結果を新基準に見直すときは、点検当時の画像などで再診断します
03 どう判定するか(鉄筋コンクリート管の例)
とりまとめは、鉄筋コンクリート管、シールド管、塩ビ管等、更生管などの構造ごとに診断基準を示しています。鉄筋コンクリート管では、これまで腐食・たるみ・クラックなどの組み合わせで判定していたため、単独の項目で著しい異状が見つかっても緊急度Ⅰにならない場合がありました。新しい基準では、診断項目ごとに、最も異状の程度が著しいもので健全度を決めます。
| 診断項目 | Ⅳ | Ⅲ | Ⅱ |
|---|---|---|---|
| 硫化水素による腐食 | 鉄筋が広範囲に露出した状態など | 骨材のみが広範囲に露出した状態など、または腐食進行速度が年5mm以上 | 骨材のみが局所的に露出した状態など、または腐食進行速度が年3~5mm |
| 破損・クラック | 欠落、または最大幅2mm以上のクラックで浸入水が流れている以上の状態 | 最大幅2mm以上のクラック | 最大幅2mm未満のクラック |
| 浸入水 | 噴き出ている | 流れている | にじみ出ている(痕跡を含む) |
とりまとめ p.12・30 の診断基準から一部を抜粋。健全度Ⅰは「異状なし(健全)」
また、「腐食」を一括りにせず、「硫化水素による腐食」と「それ以外の腐食等」(中性化・塩害による鉄筋腐食、摩耗・風化)に分けて診断します。見分けるために、点検時に硫化水素ガス濃度や管壁のpHを測ります。健全なコンクリートはpH12~13の強アルカリ性で、硫酸で腐食しているとpHが下がります。
修繕との関係も整理されています。健全度ⅡまたはⅢの破損・クラック・浸入水などに対し、JIS規格や審査証明などで耐力・機能の回復が確認された材料・工法を使い、適切な施工管理をした修繕は、健全度Ⅰ相当に回復したものとして扱います。ただし、鉄筋の腐食などで本来の構造耐力に影響が及んでいる健全度Ⅳなどの劣化は、修繕しても回復しないとされています。
04 健全度Ⅲは点検の間隔を縮める
重要管路で、直近の詳細点検で健全度Ⅲと診断され、その状態が続いている箇所は、点検の頻度をさらに上げます。目安は、10年に1回→5年に1回、5年に1回→2~3年に1回、3年に1回→1~2年に1回(いずれも「以上」)です。とりまとめは、すでに健全度Ⅲの管は次の点検までに劣化が早く進み、最悪の場合は陥没に至るおそれがあるためと説明しています。
重要管路で健全度ⅢまたはⅣの異状が見つかったときは、道路管理者と時期などを調整して、管路に起因する空洞の有無を確かめる空洞調査を行います。健全度Ⅲ・Ⅳの箇所の状況は道路管理者と共有し、点検結果は異状箇所ごとに公表する方向です(健全度Ⅳは異状の状態が分かる画像を、判明しだい速やかに公表)。
よくある質問
Q. 「健全度Ⅰ」は最も悪い状態ですか。
A. いいえ。健全度Ⅰは「構造物の安全性が低下していない状態(健全)」で、最も重いのは健全度Ⅳ(緊急措置段階)です。これまでの緊急度では「緊急度Ⅰ(重度)」が最も重かったため、番号の向きが逆になっています。
Q. 修繕すれば健全度は上がりますか。
A. 健全度ⅡまたはⅢの破損・クラック・浸入水などについて、JIS規格や審査証明などで耐力・機能の回復が確認された材料・工法を使い、適切な施工管理をした修繕は、健全度Ⅰ相当に回復したものとして扱われます。鉄筋の腐食などで本来の構造耐力に影響が及んでいる健全度Ⅳなどの劣化は、修繕しても回復しないとされています。
なお、自社の配管や設備でも、点検結果を「区間ごと」ではなく「箇所ごと」に、状態の区分と写真をそろえて残しておくと、前回からの進行が比べやすくなります。本サイトを運営する有限会社エコニティは、無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。
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