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職場の熱中症対策、義務化2年目の夏──改正労安衛則のポイントと最新ソリューション

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この記事の要点

  • 2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、職場の熱中症対策は罰則付きの法的義務になりました(義務化2年目の夏)。
  • 対象はWBGT28度以上または気温31度以上の環境での一定時間以上の作業。「早期発見・報告体制」と「発見後の処置手順」の整備が必須です。
  • 2025年の職場の熱中症死傷者数は1,803人と過去最多(前年比43%増)。一方で死亡者数は19人と前年比39%減で、厚労省は義務化の効果と分析しています。
  • ファン付きウェアや心拍センサー連携アプリなど、現場で使える計測・予防ソリューションも進化しています。

▶ 熱中症対策は「努力」から「義務」へ──放置は罰則の対象に

設備の点検・保全は、夏場の屋外・高温環境での作業がつきものです。2025年6月、改正労働安全衛生規則が施行され、職場の熱中症対策はすべての事業者の「法的義務」となりました。施行から2年目を迎える今夏、対応は待ったなしです。厚生労働省の確定値では2025年の職場の熱中症死傷者数は1,803人と過去最多を更新した一方、死亡者数は19人と前年比39%減少しており、義務化による重篤化防止の効果がうかがえます。ある民間調査では義務化の認知は約9割に達する一方、約3割が対策強化に至っていないとも報告されています(NAC社調べ/2026年5月20日)。本記事では、義務の内容と罰則、そして現場で使える最新ソリューションを整理します。

01
改正労働安全衛生規則:何が義務になったのか

今回の義務化の根拠は、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和7年厚生労働省令第57号)」です。2025年6月1日に施行され、事業者の規模や業種を問わず、一定の高温環境で作業を行うすべての職場が対象となります。

対象となる作業

義務の対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上、または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上、または1日のうち合計4時間を超えて行われる作業です。設備保全の現場では、夏場の屋外点検や高温の機械室での作業などが該当しやすいため、注意が必要です。

事業者に求められる2つの義務

  • 早期発見・報告の体制整備:熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、速やかに報告できる仕組み(連絡体制・担当者の明確化など)を整えること。
  • 発見後の処置手順の作成・周知:作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた救急要請など、重症化を防ぐための具体的な対応手順をあらかじめ定め、関係者に周知すること。

罰則

これらの義務に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。熱中症対策は、もはや「気をつける」レベルの努力義務ではなく、体制と手順を整える法的責任になったといえます。

義務とあわせて押さえたい「ガイドライン」

2026年3月18日、厚生労働省は改正省令の義務とは別に、「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を新たに策定しました。こちらは罰則を伴う義務ではなく、事業者が業種・業態に応じて管理体制の確立・作業環境管理・作業管理・健康管理・労働衛生教育などの中から適切な対策を選択できるようにした推奨的な指針です(旧・熱中症予防基本対策要綱は廃止)。「省令=最低限の義務」「ガイドライン=それを上回る推奨対策」という2階建ての構造で理解すると実務に落とし込みやすくなります。

02
なぜ義務化されたのか──増え続ける職場の熱中症

背景にあるのは、職場での熱中症被害の深刻化です。厚生労働省が2026年5月27日に公表した確定値によると、2025年の職場における熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は1,803人(前年比546人・約43%増)にのぼり、統計開始以来最多を記録しました。近年の猛暑を背景に、被害は右肩上がりで拡大しています。

一方で、死亡者数は19人と前年比12人・約39%の減少となりました。厚生労働省はこの死亡者数の減少について、「令和7年に、事業者に対し、熱中症のおそれのある作業を行うときには、報告体制の整備、手順の作成等の措置を講じることを義務付ける労働安全衛生規則を改正・施行したことにより、事業場における熱中症の重篤化防止対策が進み、死亡災害の防止が一定程度図られたためと考えられる」と分析しています。死傷者数自体は増え続けているものの、義務化が重篤化の防止に一定の効果を上げつつあることを示すデータといえます。

それでも、現場の対応は追いついていません。株式会社ナックが現場・製造等の職種を抱える企業の労務担当500名に実施した「職場の“暑さ対策”実態調査」(2026年5月20日公表)では、次のような実態が示されました。

  • 熱中症対策義務化の認知度は86.4%。一方で、義務違反の罰則を「全く知らない」担当者が18.2%
  • 現在の対策は「エアコン・空調管理」が68.6%と最多。一方「水・飲料の常備」は51.0%にとどまる。
  • 改正後に新たな対策を「特になし」とした企業が27.0%(=約3割が追加対応をしていない)。

「義務化は知っているが、罰則や具体策までは十分に整備できていない」──この認知と実装のギャップが、現場に残る課題です。なお厚生労働省は毎年5月から9月にかけて「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開し、WBGTの測定と対策、初期症状の把握・緊急時対応の体制づくりなどを呼びかけています。

キーワード 概要
WBGT(暑さ指数) 気温・湿度・輻射熱(日射や地面からの照り返し)・風速を総合的に評価して算出する熱ストレスの指標。義務化の判断基準に用いられる。
熱順化 体が暑さに慣れること。順化していない作業者(休み明け・異動直後・新規入場者など)はリスクが高く、特に注意が必要。
クールワークキャンペーン 厚生労働省が毎年5~9月に実施する職場の熱中症予防の重点運動。WBGT測定・体制整備・初期対応の徹底を呼びかける。

03
現場で使える最新ソリューション

義務化への対応は、体制づくりだけでなく、作業者を実際に守る「装備」と「計測」の両面で進んでいます。2026年に発表された取り組みを紹介します。

ファン付きウェアの予防効果を学術的に実証

新コスモス電機は産業医科大学との共同研究で、防爆ファン付きウェア「AIR FLOW PRO」の熱中症予防効果を学術的に実証しました(2026年6月17日発表)。気温42.0度・相対湿度50%の環境下で健康な成人男性13名を対象に比較したところ、ファン稼働時は核心温(直腸温・食道温)の上昇が有意に抑制され(P<0.0001)、平均心拍数の上昇幅は約21%抑制(未稼働75bpmに対し稼働時59bpm)。研究成果は第99回日本産業衛生学会(2026年5月30日)で発表されました。装備の効果が客観的データで裏づけられた事例です。

心拍センサー連携で作業環境をリアルタイム管理

SWCCは2026年6月、現場作業者の作業環境管理アプリ「ハトメル」を発表しました。腕に装着した小型心拍センサーと連携し、暑さ指数(WBGT値)と心拍数の変化に応じて通知を行い、利用者・管理者がリアルタイムで作業環境を確認できます。離れた場所からの安全管理や身体データの履歴管理にも対応し、「早期発見・報告の体制整備」という義務に技術面から応える仕組みといえます(※同アプリは作業環境・安全管理の支援を目的とし、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません)。

企業のメンテナンス担当者のためのチェックリスト

  • 自社の作業がWBGT・時間の基準に該当するか確認:夏場の屋外点検・高温機械室での作業が、WBGT28度以上または気温31度以上・一定時間以上の条件に当てはまらないか、現場ごとに洗い出します。
  • 「発見・報告」の体制を文書化する:誰が・どのように異変に気づき、誰に報告するか。連絡体制と担当者を明確にし、口頭ルールを文書化・周知しているか点検しましょう。
  • 「発見後の処置手順」を準備する:作業離脱・冷却・救急要請の手順を定め、現場に掲示・共有しているか。義務であると同時に、重症化を防ぐ実務上の要です。
  • 計測・装備の導入を検討する:WBGT計の設置、ファン付きウェア、心拍センサー連携アプリなどは、義務対応と作業者保護を同時に進める有効な手段です。順化していない作業者への配慮も忘れずに。

まとめ

職場の熱中症対策は、2025年6月の改正労働安全衛生規則施行により、罰則を伴う法的義務となりました。求められるのは「早期発見・報告の体制」と「発見後の処置手順」の整備です。死傷者が増え続けるなか、対応は事業者の責任であり、作業者の命を守る取り組みでもあります。

幸い、ファン付きウェアや心拍センサー連携アプリなど、現場を支えるソリューションは着実に進化しています。まずは自社の作業が基準に該当するかを確認し、体制・手順・装備の3点を本格的な夏が来る前に整えておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 小規模な事業所や短時間の作業でも義務の対象になりますか?

A. 義務は事業者の規模や業種を問いません。ただし対象作業には「WBGT28度以上または気温31度以上」かつ「連続1時間以上、または1日4時間超」という条件があります。自社の作業がこれに該当するかを、現場ごとに確認することが重要です。

Q. WBGT計は必ず設置しなければなりませんか?

A. 対象作業ではWBGT値の把握が前提になります。専用のWBGT計のほか、環境省・気象庁が提供する暑さ指数の情報なども活用できますが、現場の実態に近い値を把握するには測定機器の設置が有効です。心拍など作業者の身体データと組み合わせる管理も広がっています。

Q. ファン付きウェアを支給すれば義務を果たしたことになりますか?

A. 装備は有効な予防策ですが、それだけでは義務を満たしません。義務の中心は「早期発見・報告の体制」と「発見後の処置手順」の整備です。装備・計測と、体制・手順の両輪で備えることが求められます。

Q. 2026年3月策定の「ガイドライン」は、改正省令の義務とは別物ですか?

A. はい、別物です。改正省令(2025年6月1日施行)が罰則付きの法的義務であるのに対し、ガイドラインは事業者が業種・業態に応じて対策を選べる推奨的な指針です。まず省令の義務を満たしたうえで、ガイドラインを参考により手厚い対策を検討する、という位置づけで捉えると実務に活かしやすくなります。

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