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デジタルツイン

▶ 定義

デジタルツインとは、現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術である。

英語表記は Digital Twin。上の定義は総務省「令和6年版 情報通信白書」からの引用です。法令で定義された用語ではありませんが、国の白書に定義が明記されている語です。同白書は「街や自動車、人、製品・機器などをデジタルツインで再現することによって、渋滞予測や人々の行動シミュレーション、製造現場の監視、耐用テストなど現実空間では繰り返し実施しづらいテストを仮想空間上で何度もシミュレーションすることができるようになる」としています。

01 定義が1年で変わっている ── その差が実務の分かれ目

情報通信白書のデジタルツインの定義は、令和5年版と令和6年版で書き換えられています。並べて読むと、この語の勘所が見えます。

定義
令和5年版 現実空間の物体・状況を仮想空間上に「双子」のように再現したもの
令和6年版 現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術

令和5年版は「再現したもの」=状態を指していましたが、令和6年版は「シミュレーションを行う技術」=行為まで含む書き方になりました。この差は言葉遊びではありません。実務ではこう効きます。

  • 3Dモデルを作っただけでは足りない:設備や建物を点群データで計測して3D化した段階は、令和5年版の「再現したもの」に届いていても、令和6年版の「シミュレーションを行う技術」には届いていません
  • データが更新され続けることが前提:「現実世界から集めたデータを基に」とあるとおり、一度作って終わりの静的なモデルは想定されていません
  • 何をシミュレーションするのかを先に決める:定義に目的が組み込まれている以上、「とりあえずデジタルツインを作る」という進め方は定義上も成立しません

社内で「デジタルツインを導入する」という話が出たとき、まず「どちらの意味で言っているか」を確認すると、投資の規模も期間も現実的な線に落ち着きます。

※ 令和5年版の定義には、総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」中間とりまとめが出典として付されています。

02 設備保全で何に使えるのか

白書が挙げる活用例のうち、設備保全に直接かかるのは「製造現場の監視」と「耐用テスト」です。ここに「現実空間では繰り返し実施しづらいテストを仮想空間上で何度もシミュレーションすることができる」という説明が付きます。

この「繰り返し実施しづらい」という条件が、保全でデジタルツインが効く場面を教えてくれます。

現実で試しにくい理由 保全での例
壊さないと分からない 部品を限界まで使ったときに何が起きるか。実機では試せない
止められない 稼働中の設備で運転条件を変えた場合の影響
入れない・危険 高所・狭所・高温部の状態把握(No Entry点検と問題意識が重なる領域)
回数を稼げない 年1回しか起きない事象。実機では10年かけないと10回のデータが取れない

逆に言えば、現実で測って判断できることをわざわざ仮想空間で再現する必要はありません。振動値のしきい値判定で足りる用途にデジタルツインを持ち込むと、費用に見合いません。

なお、公的ガイドラインの中でもデジタルツインへの言及があります。NEDOと経済産業省製造産業局のSMDGは、変革課題1(新製品立ち上げ)のLv5「現実との双方向連携」の記述として「実装段階、量産段階の情報のフィードバックと修正プロセスの確立(デジタルツイン)」を挙げています。デジタルツインが5段階の最上位に置かれているということであり、設備保全にあたる変革課題44でも、Lv5は「最適な対処内容が指示される」段階です。

03 言葉の扱いに注意する

デジタルツインは法令用語ではなく、法令にも行政の基準類にも定義規定はありません。本ページが引用しているのは総務省の白書であり、白書は現状を整理して示す文書であって、要件を定める基準ではありません。

実務上は次の点に注意してください。

  • 定義自体が更新される:上で見たとおり、同じ白書でも1年で書き換えられています。引用するときは版を明示してください
  • 製品名としての「デジタルツイン」は範囲がまちまち:3D表示だけのものから、シミュレーションと現実への制御まで含むものまであります。仕様書には「何を入力し、何を計算し、何を出力するか」で書くのが安全です
  • 市場予測の数字は出典と時点を添えて使う:白書はSDKIの調査として、グローバル市場が2022年の99億ドルから2035年には約63倍の6,255億ドルに成長すると予測されている、と紹介しています
保全担当者が明日からできること
  • 「何をシミュレーションしたいか」を1行で書く:これが書けないうちは、3Dモデルを作っても使い道が決まりません。定義に目的が含まれている以上、ここが出発点です。
  • 現実で測れば済むことを切り分ける:しきい値判定で足りる用途は、仮想空間を作らなくても回ります。「繰り返し実施しづらいこと」に絞ると投資判断がはっきりします。
  • データが更新され続ける経路を確認する:「現実世界から集めたデータを基に」が定義の前提です。センサーや点検記録がどの頻度で入ってくるのかを先に押さえてください。
  • 提案を受けたら定義を確認する:「このデジタルツインは、現実を再現するところまでですか、シミュレーションまで含みますか」と聞くだけで、見積の中身の理解が変わります。

よくある質問

Q. 設備を3Dスキャンしてモデル化すれば、デジタルツインができたと言えますか。

A. 定義によります。総務省の令和5年版 情報通信白書は「現実空間の物体・状況を仮想空間上に『双子』のように再現したもの」としており、この定義であれば当てはまり得ます。一方、令和6年版は「現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術」としており、シミュレーションを行わない段階は含みません。3Dモデル化は出発点であって、それ自体がゴールではないと理解しておくのが安全です。

Q. デジタルツインとメタバースは何が違うのですか。

A. 情報通信白書は両者を仮想空間に関する別々の項目として扱っています。デジタルツインは現実世界から集めたデータを基に現実の「双子」を構築し、シミュレーションを行うものと定義されており、現実に対応するものが存在することが前提です。仮想空間そのものを目的とする場合とは、出発点が異なります。設備保全で扱うのは前者であり、現実の設備と対応が取れていなければ意味を持ちません。

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なお、デジタルツインの定義の前提は「現実世界から集めたデータを基に」という部分です。設備の点検記録や対応履歴が紙やファイルに分散していると、仮想空間側を更新し続ける経路そのものが作れません。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。

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