▶ 定義
SMDGとは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と経済産業省製造産業局が公開する「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」の略称である。
英語表記は Smart Manufacturing Development Guideline(SMD Guideline)。令和6年6月に初版、令和7年5月に第2版が公開されました。ものづくりの全体プロセスを4つのチェーンに分け、各社が取り組むべきテーマを57の「変革課題」として一覧化した公的資料です。設備保全にあたるのは変革課題44「設備不具合の予兆を検知し、安定稼働を維持する仕組み」です。本文・別紙リファレンス一式・実践ワークシートがNEDOのウェブサイトで無償公開されています。
01 何のための資料か
SMDGが想定しているのは、「DXを進めたいが、どこから手を付ければよいか分からない」という状態です。ガイドライン本文は策定の背景として、次のような現場の行き詰まりを挙げています。
- デジタル技術で事業を大きく変えたいが、新たな発想を具体的な計画・施策に落としこむのが難しい
- 現場を巻き込んで検討を進めたいが、目の前の課題に留まりがちで、飛躍のある議論になりづらい
- ITベンダーから様々な提案はあるが、「結局、何を実現したいのか」、ものづくりプロセス自体の改革構想がなく、投資に踏み切れない
- システムやツールを導入したが、有効活用できず、途中でやめてしまった取組みも出てきている
- 各部門でデジタル化を進めるが、動きがばらばらで大きな変革につながらず、総合的な解決策を見出すことも難しい
これに対してSMDGが提供するのは、答えそのものではなく「リファレンス」(スマート化の道筋を描くための考え方や視点、目指す姿を具体的に示したもの)です。本文は「デジタルソリューションによる変革のゴールは、所謂『先進事例』に正しい答えがあるのではなく、企業・事業規模や業界、サプライチェーン上のポジション、企業ごとの経営方針など、各社の置かれた環境によって異なる」と明記しています。
対象読者は「大企業から中小企業までを対象に、実際にスマート化プロジェクトのリーダー役を担う管理職とその『けん引役』の経営層(役員)」とされています。専門部署を持たない規模の会社も想定に入っている点は、稟議で引用する際に押さえておくとよい部分です。
02 4つのチェーンと57の変革課題
SMDGは、ものづくりの全体プロセスを「マニュファクチャリングチェーン」と呼び、次の4つに分けています。設備保全が属するのはプロダクションチェーンです。
| チェーン | ガイドラインの定義 |
|---|---|
| エンジニアリングチェーン | 製品・工程設計を中心とした技術と情報をものづくり各機能に訴求する連鎖 |
| サプライチェーン | 最終需要者に商品供給するための、材料調達から商品納入までの「もの」を中心とした業務連鎖 |
| プロダクションチェーン | 自社の製造リソース(人、設備、工法、ノウハウ)により、原材料を加工し商品として仕上げる一連の工程連鎖 |
| サービスチェーン | 提供サービスの顧客への認知と品質の魅力の向上、及び納入後の商品価値を維持向上させるための「サービス」を中心とした業務連鎖 |
この4チェーンに沿って、実際のスマート化事例から共通性の高いテーマを抽出・整理したものが「マニュファクチャリング変革課題マップ」で、番号1から57までが並びます。設備保全は変革課題44「設備不具合の予兆を検知し、安定稼働を維持する仕組み」(プロダクションチェーン/「設備管理のレベルアップ」区分)です。
そして57の課題それぞれに、Lv1「情報の標準化」からLv5「現実との双方向連携」までの到達度が定義されています。これが実現レベル5段階です。SMDGが枠組み、実現レベル5段階がその中の物差し、という関係になります。
ガイドラインは、この一覧について「すべての項目で最高レベルを実現するよう求めるものではなく、自社の変革における重点となる課題を探索・取捨選択」するためのものだと明記しています。
03 公開されている資料の構成
NEDOのウェブサイトからは、本文と7つの別紙リファレンス、実践ワークシートが一括でダウンロードできます。保全部門が最初に見るべきものを太字にしました。
| 資料 | 内容 |
|---|---|
| 本文(第2版) | 全体像。策定の背景、4つのチェーン、変革課題マップ、選定方法、プロジェクト設計まで |
| リファレンス1・2 | 環境変化別/生産システム類型別に、どの変革課題を重点とすべきかの視点 |
| リファレンス3 | 変革課題マップ(57課題の一覧) |
| リファレンス4 | 変革課題別実現レベル5段階。変革課題44の記述はここにある |
| リファレンス5 | 実現レベル別の仕組み・構築手法。各レベルで標準化すべき情報や実装するソリューションまで踏み込む |
| リファレンス6・7 | 企画から実装に至るプロジェクト設計/推進モデル事例集 |
| 実践ワークシート | Excel形式。手順付きの版もある |
本文は「まずは、『変革課題』の一覧から、重要と感じる課題を5-10項目選んでみるのがわかりやすく、自らの担当部門の枠を超えて、ものづくりの全機能を巻き込んだ変革を企てるためのツールとして有用」と、具体的な使い始め方まで書いています。チーム討議用にリファレンス3から5を集約した1冊も同梱されているので、会議資料としてはこれが使いやすいでしょう。
- 保全の話を「経営の言葉」に翻訳する:変革課題44には、目指すKPIとして「設備トラブルの削減」「保全コストの最適化」が示されています。国の資料に載っている表現をそのまま稟議に引ける、というのが最も実用的な使い方です。
- 保全単独ではなく全体の中に置く:57課題のうち、保全に関係するのは44だけではありません。品質記録(41)、トレーサビリティ(42)、製造実績データ(46)などは同じデータ基盤の上に乗ります。設備管理システムの投資を保全部門だけの案件にしないための地図として使えます。
- 「まずLv2・Lv3」で構わないと示す:本文は、多くの国内製造事業者ではLv2・Lv3の実現が当面の重点であり、Lv4に挑むのは競争優位の中核に限られる、と述べています。過大な目標設定を避ける根拠になります。
- 費用はかからない:一式が無償公開されています。ダウンロードして、リファレンス4の変革課題44の1ページを印刷するところから始められます。
よくある質問
Q. SMDGは製造業向けの資料ですが、ビル設備や施設管理の担当者にも使えますか。
A. 対象領域は製造業の「ものづくりの全体プロセス」であり、建築物や公共インフラの維持管理を直接の対象にしたものではありません。ただし変革課題44の5段階(項目の定義 → データの蓄積 → 状態に基づく保全 → リスクの予測 → 対処内容の指示)は、設備の種類を選ばない一般性を持っています。自社の現在地を測る物差しとしてなら、業種を問わず参照できます。制度上の位置づけを引用する場合は、あくまで製造業向けのガイドラインである点を添えてください。
Q. SMDGに「予知保全」「CBM」といった保全の専門用語は出てきますか。
A. 出てきません。本文・別紙リファレンスの全ページを検査したところ、「予知保全」「CBM」「TBM」のいずれも1か所も使われていません。SMDGの表現は「設備の状態に基づく保全」です。保全の専門用語との対応づけは読み手側で行う必要があります。本用語集では、CBM/TBMと予知保全の各ページでその対応を整理しています。
関連する解説記事
SMDGの成り立ちと、変革課題44に紐づくNEDOの研究開発事業を解説しています。
なお、SMDGが起点に置くLv1「情報の標準化」とLv2「データの蓄積」は、設備台帳と点検記録が1か所にそろっていることを前提にしています。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。