▶ 定義
実現レベル5段階とは、NEDOと経済産業省製造産業局が公開する「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」(SMDG)が、57の変革課題ごとに定める到達度の物差しである。
Lv1「情報の標準化」、Lv2「情報・データの蓄積」、Lv3「データによるプロセスの連携」、Lv4「多頻度解析による最適化」、Lv5「現実との双方向連携」の5段階からなり、別紙リファレンス(4)「変革課題別実現レベル5段階」に課題ごとの具体的な記述が示されています。設備保全に直結するのは変革課題44「設備不具合の予兆を検知し、安定稼働を維持する仕組み」です。
01 「やる/やらない」から「今どの段階か」へ
予知保全の議論は、しばしば「導入するか、しないか」の二択になります。そのため「うちはまだ紙の点検表だから無理」で会話が終わってしまう。実現レベル5段階は、この二択を5段階の物差しに置き換えるための道具です。
SMDGは変革課題44について、現状を「最適な保全タイミングがわからない」「設備トラブルの未然防止が十分でない」、実現イメージを「設備の状態変化の予兆に基づく保全が仕組みとしてできている」と定義し、評価指標(KPI)として「設備トラブルの削減」「保全コストの最適化」の2つを挙げています。稟議書にそのまま書ける表現が、国の公式資料に載っているということです。
02 変革課題44の5段階
以下は別紙リファレンス(4)に示された、変革課題44における各レベルの到達状態です。自社の主要設備がどこにいるかを当てはめてみてください。
| レベル | 到達している状態 |
|---|---|
| Lv1 情報の標準化 |
設備の不具合や不具合発生の影響因子に関する項目が定義されている |
| Lv2 情報・データの蓄積 |
定義された項目に基づきデータが蓄積されている |
| Lv3 データによる プロセスの連携 |
蓄積されたデータに基づき、設備の状態に基づく保全が行われている |
| Lv4 多頻度解析による 最適化 |
データから不具合の発生リスクを予測し、不具合未然防止に向けた対処を検討・実施することができる |
| Lv5 現実との 双方向連携 |
不具合の発生リスクを予測し、未然防止のための最適な対処内容が指示される |
同資料は各レベルの状態を、図で「故障してから修理」(設備の状態が見えず、突発的な停止・修理により稼働率が不安定)から「基準に達したら修理」(設備の状態を見える化・監視して故障を予測し、計画的な修理により稼働率が安定)へ向かう流れとしても示しています。
03 保全担当者にとっての要点は「Lv1・Lv2に技術の話が無い」こと
この5段階を読んで最初に気づくのは、Lv1とLv2にセンサーやAIがまったく登場しないことです。最初にやるべきは「何を不具合とみなすか」「何が影響因子か」を項目として決め、書式を揃えること。予知保全が頓挫する典型が「センサーを付けたがデータが使えなかった」であることを踏まえると、この順序には説得力があります。
そしてCBM(状態監視保全)に相当するのはLv3です。ゴールではなく途中の一段。「うちはまだ紙の点検表だから予知保全なんて無理」ではなく、「今はLv1の途中だから、次は記録項目の定義を固める」と言い換えられる。これが物差しを持つことの実務的な価値です。
※ SMDGの本文および別紙リファレンスに「CBM」という略語は登場せず、Lv3は「設備の状態に基づく保全」と記述されています。
- 主要設備ごとに現在地を書き出す:設備によって段階が違うことが可視化されるだけで、投資の優先順位が付けやすくなります。
- Lv1から着手する:不具合事象(発生時期・発生部位・原因/対策)と影響因子(温度・湿度・振動・電流/電圧値など)を、どの書式で記録するか決める。センサー導入より先に、ここを固める。
- KPIを2つに絞る:SMDGが挙げるKPIは「設備トラブルの削減」と「保全コストの最適化」。社内説明の指標をこの2つに合わせると、公的資料を根拠にできます。
- 上長・経営層と一緒に読む:ガイドライン一式はNEDOのサイトで無償公開されています。57の変革課題から各自が重要と感じる項目を5から10個選ぶだけで、部門横断の議論の起点になります。
よくある質問
Q. 実現レベル5段階は設備保全だけの物差しですか。
A. いいえ。SMDGはものづくりをエンジニアリングチェーン・サプライチェーン・プロダクションチェーン・サービスチェーンの4つに分け、合計57の変革課題を一覧化しています。5段階の物差しは、その57課題すべてに定義されています。設備保全に該当するのが、プロダクションチェーンの「設備管理のレベルアップ」に分類される変革課題44です。
Q. ガイドラインは有料ですか。中小企業でも使えますか。
A. NEDOのウェブサイトで無償公開されています(本文・別紙リファレンス一式・実践ワークシート)。SMDG本文は「大企業から中小企業までを対象に、実際にスマート化プロジェクトのリーダー役を担う管理職とその『けん引役』の経営層(役員)にとっての手引きとなるものを目指して作成した」と明記しています。
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