▶ 定義
省力化投資促進プランとは、内閣官房 日本成長戦略本部のもとで業種別に策定された、人手不足への対応と生産性向上のための計画をいう。
法令で定義された用語ではなく、政府の計画文書の名称です。飲食業、宿泊業、小売業、生活関連サービス業、その他サービス業、製造業、運輸業、建設業、医療、介護・福祉、保育、農林水産業の13分野を対象とし、大半は令和7年6月13日に策定されました(警備業のみ令和7年12月22日)。2025年から2029年を「省力化投資集中期間」と位置づけています。
01 13分野で構成は共通、所管省庁は異なる
各業種版のプランは、いずれも次の構成で書かれています。
- 0 プランの概要
- 1 実態把握の深掘(人手不足の状況把握/優良事例と効果的な省力化投資のポイントの収集と整理)
- 2 多面的な促進策(投資補助・金融支援/優良事例の横展開のための支援策 ほか)
- 3 サポート体制の整備・周知広報
- 4 目標とKPIの設定
- 5 スケジュール
一方で、業種ごとに作成する省庁が違います。同じ枠組みで書かれていながら担当する役所が異なるため、並べて読むと業界の事情の違いが見えます。
| 業種 | 所管 | 労働生産性の目標(2029年度まで) |
|---|---|---|
| 中小製造業 | 経済産業省 | 製造業の労働生産性を24%向上(名目値、2024年度比) |
| ビルメンテナンス業 | 厚生労働省 | 25%向上(2024年比) |
| 警備業 | 警察庁 | 25%向上(2024年度比) |
| 建設業 | 国土交通省 | 同プラン参照 |
たとえばビルメンテナンス業のプランは、ビルクリーニング業が従事者の80%を占め、有効求人倍率が約2.0から3.0で推移し、従事者のうち60代以上が57.9%、70代以上が27.0%を占めると分析しています(令和2年国勢調査)。警備業のプランは有効求人倍率6.70倍(2025年9月、全職業1.10倍)、65歳以上の割合34.3%(2024年、全職業13.6%)という数字を挙げています。
02 省力化レベル3段階という物差し
各プランには、業務を10前後に分解して取組度合いを記号で評価する省力化レベルの表が載っています。凡例は全業種で共通です。
◎:省力化を進めている(設備・ITツールの導入に加え、業務プロセス変更等を伴う取組)
○:省力化を進めている(設備・ITツールの導入)
-:進めていない
設備やITツールを導入しただけでは○にとどまり、◎にはなりません。◎に進むには業務プロセスの変更が伴っている必要がある、というのがこの物差しの要点です。そのうえで各プランは、レベル3を「目標となる優良事例」、レベル2を「ベンチマークとなる事例」、レベル1を「業界における平均的な事例」と定めています。
SMDGの実現レベル5段階との違い
公的な成熟度モデルという点では、NEDOと経済産業省製造産業局が公開したSMDGの実現レベル5段階と発想が共通しています。違いは粒度と対象範囲です。
| 観点 | SMDG 実現レベル5段階 | 省力化レベル3段階 |
|---|---|---|
| 作成 | NEDO・経済産業省製造産業局 | 内閣官房 日本成長戦略本部(所管省庁が業種別に作成) |
| 対象 | 製造業。57の変革課題ごと | 13分野。業務ごと |
| 段数 | 5段階 | 3段階 |
| 設備保全の扱い | 変革課題44「設備不具合の予兆を検知し、安定稼働を維持する仕組み」として明示 | 対象業務として挙げられていない |
03 補助金とのつながりと、設備保全の扱い
プランは、それ自体に予算や申請手続きがあるわけではありません。既存の支援策を業種の事情に合わせて束ね、周知する計画です。中小企業庁は2026年8月26日の発表で、「内閣官房が取りまとめる『省力化投資促進プラン』を実行し」、支援サイト「省力化ナビ」に5業種(冠婚葬祭業、ビルメンテナンス業、運輸業(バス・タクシー)、クリーニング業、警備業)を追加したと説明しています。
この省力化ナビの活用は、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」および「デジタル化・AI導入補助金(複数者連携デジタル化・AI導入枠を除く)」の採択審査における加点要件になります。プランから補助金までが、支援サイトを経由してつながっている構造です。
中小製造業プランが対象に挙げるのは2次加工・組付・検査・製織・縫製・工程間搬送であり、ビルメンテナンス業プランは清掃と勤怠管理です。「設備保全」「予知保全」という語は対象業務として登場しません。「国が設備保全の省力化を推進している」と読むのは正確ではありません。
ただし、プランが紹介する優良事例には保全の時間を削った企業が含まれています。中小製造業プランのワイ・ケー・ピー工業(岐阜県中津川市、従業員112名)は、IoTシステムの独自開発により金型管理時間を年間約1,050時間から90時間へ短縮したと紹介され、図には「金型のメンテナンス時期を知らせるアラーム表示」が示されています。建設業プランには、自律飛行ドローンによる坑内の定期巡回点検が優良事例として掲載されています。
よくある質問
Q. 省力化投資促進プランは法律や閣議決定ですか。
A. どちらでもありません。内閣官房 日本成長戦略本部のもとで業種別に策定された計画文書です。法令で定義された用語でもありません。ただし中小企業庁は「内閣官房が取りまとめる『省力化投資促進プラン』を実行し」と明記して施策を打っており、実際の補助金や支援サイトの設計に反映されています。
Q. 自社の業種のプランはどこで読めますか。
A. 内閣官房のサイトに13分野のPDFが掲載されています。業種の区分は、飲食業/宿泊業/小売業/生活関連サービス業(理容業、美容業、クリーニング業、冠婚葬祭業)/その他サービス業(自動車整備業、ビルメンテナンス業、警備業)/製造業(中小製造業、食品製造業)/運輸業/建設業/医療/介護・福祉/保育/農林水産業です。工場を持つ製造業であれば「中小製造業」版が該当します。分量は20ページから42ページ程度です。
Q. 「省力化投資集中期間」とは何ですか。
A. 各プランのスケジュール図が示す、2025年から2029年の5年間のことです。この期間に優良事例の横展開とサポート体制の整備を進め、2029年度末に労働生産性の目標(業種により24%または25%向上)を達成するという工程になっています。なお省力化指数を用いる中小企業省力化投資補助金の基本要件は、労働生産性の年平均成長率4.0%以上です。5年間で年4.0%ずつ伸ばすと複利でおよそ22%になり、プランの目標と同じ水準を1社分に割り付けた形になっています。
なお、省力化レベルの◎が求めているのは「設備を入れたうえで業務プロセスを変えたか」です。点検の手順や記録の様式を変えるには、台帳と記録が同じ場所にある状態が出発点になります。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。
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