▶ 定義
上下水道DX技術カタログとは、国土交通省が、上下水道施設のメンテナンスの高度化・効率化に資するデジタル技術を、実用段階と実証段階に分けて一覧にしたものである。
法令で定義された用語ではありません。国土交通省 水管理・国土保全局 上下水道審議官グループが策定・公開している技術情報の一覧の名称です。初版は令和7年3月、本ページは令和8年9月版の記載によります。カタログ自身が明記しているとおり、掲載情報は国が評価・審査・認証したものではありません。
01 何が載っているか
カタログは2冊に分かれています。区分の定義はカタログのページに次のとおり書かれています。
| 区分 | 定義 | 令和8年9月版(3月版) |
|---|---|---|
| 実用段階編 | 国内での水道事業、下水道事業での「導入」実績があるもの | 189技術(171技術) |
| 実証段階編 | 国内での地方公共団体などの公的機関のフィールドで実証している、実用化に至っていないもの | 33技術(18技術) |
国土交通省は2026年9月30日、AI、ドローン、非破壊の空洞探査を含むセンサー技術など52件の技術を新たに掲載し、掲載件数を222件に拡充したと発表しました。新規に追加された技術は、報道発表に添付された一覧で確認できます。
掲載対象は、上下水道施設のメンテナンスのうち「点検調査」「劣化予測」「施設情報の管理・活用」等に活用できるデジタル技術です。カタログのページでは、対象施設(取水施設・浄水施設・送配水施設・給水装置、汚水処理施設・ポンプ場施設・管路施設など)、目的、要素技術(人工衛星・AI・ビッグデータ解析・ドローン・TVカメラ・スマートメーター・IoT・センサー・ロボット)で絞り込み検索ができ、選んだ技術の比較表も作成できます。
実用段階編の各技術ページには、技術の概要、適用条件・範囲、コストの試算条件、導入実績(導入先・導入年度・活用した補助金等)、特許、問合せ先が並びます。衛星データで水道管の漏水リスクを診断する技術、水道スマートメーター、水中ドローンによる水道施設の水中部の点検、管路の劣化をAIで予測する技術などが掲載されています。
02 道路の「点検支援技術性能カタログ」との違い
名前が似ているため混同されやすいのが、道路構造物向けの点検支援技術性能カタログです。両者は性格が異なります。
| 観点 | 上下水道DX技術カタログ | 点検支援技術性能カタログ |
|---|---|---|
| 対象 | 上下水道施設のメンテナンス | 橋梁・トンネル等の道路構造物の点検 |
| 掲載の基準 | 国内の上下水道事業での導入実績(実用段階)、または公的機関のフィールドでの実証(実証段階) | 国が定めた標準項目に対する性能値を開発者に求め、国管理施設等で検証した結果を掲載 |
| 国による評価 | 評価・審査・認証ではないと明記 | 標準項目に沿った性能値の検証を経ている |
つまり上下水道DX技術カタログに書かれた効果の数字は、各技術の保有者が示したものとして読む必要があります。国の手引きも、解析の過程や内容が公表されていない技術がほとんどであるとして、成果の評価方法を着手前に調整するよう求めています。
03 国の施策のなかでの位置づけ
カタログは単独の資料ではなく、国の上下水道DX施策の一部です。
- 衛星データ利用の取組方針(2026年9月2日公表):水道管の漏水調査等のスクリーニングを「実装」段階の施策とし、成果としてカタログの公表(令和7年3月)を挙げている。今後はホームページでの公募等により年2回程度内容を更新するとしている
- 導入の手引き(令和7年6月):漏水調査等のスクリーニング技術を導入する際、技術の情報収集にカタログを活用するよう示している
- 上下水道DX推進検討会 最終とりまとめ(令和7年6月6日):今後3年程度でメンテナンスに関する上下水道DX技術を全国で標準実装させるとし、水道事業者の導入率を令和7年度当初の34%から令和9年度末に100%へ引き上げる目標を置いている
よくある質問
Q. カタログに載っている技術は、国のお墨付きがあるのですか。
A. ありません。実用段階編は、掲載情報が国土交通省 上下水道審議官グループによる評価、審査、認証などを行ったものではなく、既に実用化され国内で導入実績のある技術をとりまとめたものだと明記しています。掲載されていることは「国内の上下水道事業で導入された実績がある」ことを示すにとどまります。効果の数値は、導入実績の一覧や導入事業者のコメントとあわせて読み、必要であれば先行して導入した事業者に直接聞くのが確実です。
Q. 工場やビルの設備管理にも参考になりますか。
A. 対象は上下水道事業ですが、技術の中身は工場やビルの給排水設備と重なるものがあります。たとえば実用段階編には、工業用水の管理を掲げたスマートメーターの遠隔監視システムや、配水池などのコンクリート構造物をロボットで遠隔点検する技術が載っています。各ページに適用条件とコストの試算条件が書かれているため、自社設備に当てはめられるかを判断する材料になります。
関連する解説記事
国の衛星データ利用方針、導入の手引きに載った先行事例(成果が出なかった例を含む)、工場・ビルの埋設配管への読み替えを解説しています。
関連する用語:点検支援技術性能カタログ/管路経年化率