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インフラ長寿命化計画(予防保全型メンテナンス)

▶ 定義

インフラ長寿命化計画(行動計画)とは、「インフラ長寿命化基本計画」に基づき、各インフラを管理・所管する者が、インフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中期的な取組の方向性を明らかにする計画である。

根拠となる基本計画は平成25年11月に「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」がとりまとめたもので、国や地方公共団体、民間企業等が管理するあらゆるインフラを対象としています。計画は基本計画 → 行動計画 → 個別施設計画の3階層。中心にある考え方が、損傷が軽微な段階で補修を行う「予防保全」です。

01 3階層の構造 ── 自分が関わるのはどれか

基本計画のⅣが定める階層です。名前が似ているため混同されますが、作る主体と粒度が違います。

計画 作る主体 内容
インフラ長寿命化基本計画 政府(関係省庁連絡会議) あらゆるインフラを対象に、戦略的な維持管理・更新等の方向性を示す
インフラ長寿命化計画
(行動計画)
各インフラを管理・所管する者(各省庁、地方公共団体等) 対象施設/計画期間/現状と課題/中長期的なコストの見通し/必要施策の取組の方向性/フォローアップ計画
個別施設毎の長寿命化計画
(個別施設計画)
各インフラの管理者 施設ごとの具体の対応方針。基本計画は「メンテナンスサイクルの核」と位置づけている

実務で手を動かすのはいちばん下の個別施設計画です。橋梁、トンネル、管路といった構造物ごと、あるいは事業ごとの単位で策定します。基本計画は「個別施設のメンテナンスサイクルを計画的に実行する上で最も効率的・効果的と考えられる計画策定の単位」を設定するよう求めています。

なお基本計画は、既に同種・類似の計画がある場合には「当分の間、当該計画をもって、行動計画の策定に代えることができる」としています。ゼロから作り直す必要はない、という配慮です。ストックマネジメント計画がこれに該当する分野もあります。

02 予防保全の定義と、約3割という数字

国土交通省の第2次行動計画は、予防保全を「損傷が軽微な段階で補修を行うことで施設を長寿命化させる」考え方と説明しています。事後保全(不具合が生じてから対策を行う)との対比です。

その効果は推計で示されています。平成30年11月、国土交通省が所管するインフラを対象に30年後(2018年度から2048年度)までの維持管理・更新費を推計した結果が次のとおりです。

指標 事後保全 予防保全
30年後の1年当たり費用
(平成30年度比)
約2.4倍 約1.3倍(事後保全と比較して約5割減
30年間の費用の合計 約250兆円から約280兆円 約180兆円から約190兆円約3割減

推計の対象は道路、河川・ダム、砂防、海岸、下水道、港湾、空港、鉄道、航路標識、公園、公営住宅、官庁施設、観測施設の13分野です。行動計画は「『予防保全』による効率化の効果が定量的に示されたことも踏まえ、『予防保全』に基づくインフラメンテナンスの取組を更に徹底していくことが重要である」と述べています。

※ 行動計画は「推計値については、種々の仮定を設定した上で算出しており、今後の不確定要因により数値の増減が想定されるものである」と注記しています。用地費・補償費・災害復旧費は含まれていません。引用する際はこの前提を落とさないでください。

03 「本格転換」という言い方が示すもの

第2次行動計画が掲げる目指すべき姿は次のとおりです。

予防保全に基づくインフラメンテナンスへの本格転換による維持管理・更新に係るトータルコストの縮減や、新技術等の普及促進によるインフラメンテナンスの高度化・効率化等を進め、インフラが持つ機能が将来にわたって適切に発揮できる、持続可能なインフラメンテナンスを実現する。

重点的に実施すべき取組の第1項は「計画的・集中的な修繕等の確実な実施による『予防保全』への本格転換」で、内容は「予防保全の管理水準を下回る状態となっているインフラに対して、計画的・集中的な修繕等を実施し機能を回復させ、予防保全型のメンテナンスサイクルに早期に移行」することです。

ここが実務上の要点です。予防保全に移るには、まず既に手遅れになりかけている施設を集中的に直して、管理水準の上に戻す必要がある。予防保全は「今日から壊れる前に直す」と宣言すれば始まるものではなく、いま基準を下回っている分の一時的な費用増を織り込まないと着手できないという構造を、国の計画自身が認めているということです。

04 2026年7月時点の状況

国土交通省の行動計画は、平成26年5月に第1次、令和3年6月18日に第2次が策定されました(令和6年4月1日改訂)。第2次の計画期間は、社会資本整備重点計画との整合を図って令和3年度から令和7年度までとされています。

したがって本ページの最終更新日である2026年7月26日時点で、第2次の計画期間は終了しています。令和8年2月には、行動計画のフォローアップ結果(令和7年度版)が公表されています。第3次計画の策定については一次資料で確認できなかったため、本ページには記載していません。

※ 実務で最新の計画期間・目標値にあたる必要がある場合は、国土交通省の総合政策局のページで行動計画の最新版をご確認ください。基本計画(平成25年11月)と3階層の構造、予防保全の考え方については変更がありません。

担当者が明日からできること
  • 「約3割減」を単独で使わない:30年間の合計費用の比較であり、単年度では予防保全でも約1.3倍に増える推計です。稟議で使うなら「長期では約3割減、ただし移行期は増える」とセットで示すほうが説明が通ります。
  • 管理水準を下回っている施設を洗い出す:国の重点取組の第1項がこれです。予防保全に移る前提として、まず回復させるべき施設の一覧と概算費用を持っておくと、計画の議論に乗せられます。
  • 個別施設計画の単位を見直す:基本計画は「最も効率的・効果的と考えられる計画策定の単位」を設定するよう求めています。施設1台ごとに作って回らなくなっている場合、単位の粒度そのものが原因かもしれません。
  • 既存の計画を流用できるか確認する:同種・類似の計画があれば行動計画の策定に代えられるとされています。ストックマネジメント計画や既存の保全計画が使える可能性があります。

よくある質問

Q. 「インフラ長寿命化計画」は、民間企業が持つ設備にも関係しますか。

A. 基本計画は「国や地方公共団体、その他民間企業等が管理するあらゆるインフラを対象に」策定されたものであり、対象は公共施設に限られていません。ただし行動計画の策定を求められる「各インフラを管理・所管する者」は、法令等の規定によりそのインフラの維持管理・更新等を行う者やそれを所管する国・地方公共団体の機関を指しています。一般の工場設備やビル設備が直接この計画体系に組み込まれるわけではありません。予防保全の考え方と費用推計の考え方は、設備の種類を問わず参考にできます

Q. インフラの老朽化は、どのくらいの速さで進むのですか。

A. 基本計画(平成25年11月)は、策定時点からの見通しとして「今後20年で、建設後50年以上経過する道路橋(橋長2m以上)の割合は現在の約16%から約65%となるなど、高齢化の割合は加速度的に増加する」と述べています。また対象となるインフラストックの規模を約800兆円としています。同計画は、こうした施設の中には「建設年度や構造形式等の施設諸元や、劣化や損傷等の老朽化の進展状況など、維持管理に必要な情報が不明な施設も多く存在している」ことも課題として挙げています。

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なお、予防保全への移行は「どの施設が管理水準を下回っているか」を施設ごとに把握できていることが前提になります。基本計画が課題として挙げる「維持管理に必要な情報が不明な施設」の状態では、計画そのものが立てられません。本サイトを運営する有限会社エコニティは、設備台帳・点検・部品管理をまとめて扱える無料の設備管理システム「設備管理の匠WEB版」を提供しています。

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